高付加価値鋼材の資源循環型サスティナブル未来素材供給基地形成

室蘭工業大学

キーワード:鉄リサイクル・鋳物シンジケート

ものづくりのまちとして知られる室蘭市。室蘭工業大学では、鉄をはじめとした金属を型に流し込んで冷やし固めて作る「鋳物(いもの)」について、付加価値の高い耐摩耗性鋳鉄材料やそれを使った製品開発を行っています。
この推進計画で取り組んでいることは、主に2つあります。
ひとつ目は、鋳物産業を持続可能なものにすることです。鋳物は、その生産を担うのが主に中小企業であり、研究開発や製品評価等の点でリソース不足が課題です。そこで、全国規模の「鋳物シンジケート」を形成することで大手企業からの大量受注を可能にし、また技術指導や製品の品質評価を大学がサポ―トしています。

ふたつ目は、脱炭素社会への取り組みです。現在製鉄業主流の「高炉法鉄鋼製造プロセス」では、多くのCO2を排出するため廃止する動きが進んでいます。そのためスクラップ鉄の再利用を進めていますがその不足や価格の高騰も大きな問題となります。そこで、廃船を室蘭で解体しリサイクルするシステムの確立や、廃炉になった原子力発電所のタービンなども再利用できるようにしたいと考えています。

船舶の解体

研究代表者

室蘭工業大学 もの創造系領域機械工学ユニット 清水一道教授

紹介動画

取り組みのポイントがわかるインタビュー動画

取り組みの詳細がわかる動画

 
チャレンジフィールド北海道Youtubeチャンネルにて動画公開中!

背景

鋳物は、自動車、作業機械、マンホール、照明灯の部品から鍋に至るまで、複雑な形状の品物を一体で成形できるため大量生産が可能であり、あらゆる産業の基盤となります。一方で鋳物の生産の担い手の多くは、経営資源が限られた中小企業であり、優れた技術があっても単独では受注できない、製品の評価ができない、開発した製品の販路拡大ができないなど、ビジネスチャンスを広げることが難しいケースもみられます。

また、様々な製造現場では部品や機械を長持ちさせるために耐熱性と耐摩耗性に優れ高付加価値鋼材の開発が求められています。そうした研究開発の一方で、脱炭素社会に向けた環境負荷の少ない製造方法の検討や原料の安定供給、人材の確保についても同時に考えていかなくてはなりません。

解決したい地域課題・社会課題

・耐熱性・耐摩耗性に優れた素材の開発
・鋳物産業の人材不足(研究開発・品質評価・販路拡大・製造能力強化等)
・製鉄プロセスにおけるCO2排出
・スクラップ鉄の再利用
・俯瞰人材の育成

研究シーズ

①鋳物の材料となる合金の設計技術
②鋳物の用途に合わせた最適な熱処理条件の設定

取り組み内容

・鉄鉱石や石炭からではなく、資源循環型のスクラップ鉄から二酸化炭素の排出量が少ない製法で鋳物を製造する技術の開発
・鋳物シンジケートの活性化
・廃線や廃炉から出るスクラップ鉄を安定供給するためのスキーム構築
・小・中・高校への「ものづくり出前授業」等の実施による、将来のエンジニアの育成

目指したい未来

良い研究や技術に加え、それを売り込み広げていくことも同時に必要ですが、それがすべてできる中小企業はそう多くはありません。室蘭発の鋳物シンジケートのしくみは、他業種の製造業の課題解決にも活用できると考えています。地域の企業を守ることで雇用が維持され、企業の担い手としての若者層の流出も抑えることができ、持続可能な地域社会づくりにもつながるはずです。過去の延長線上に未来があるわけではありません。従来のものづくりを大切にしつつ、新たな技術・ビジネスモデルづくりに取り組むとともに、VUCAの時代に対応できる情熱と信念をもった人材を育成し、脱炭素社会に向けて貢献したいと考えています。

 

関連動画

動画①「3億円豪邸に600kg金属融かしてはじめしゃちょーの像プレゼントした!」
多くの若者に鋳造に興味を持ってもらうため、清水教授がサイエンスアーティストの市岡元気さんとともに、YouTuberの「はじめしゃちょー」の新居に鉄像を贈るプロジェクトを企画。
「はじめしゃちょー」本人から型を取り、鋳造で鉄像ができあがります。

動画➁「はじめしゃちょー、元気先生が今度やる企画が壮大すぎ!」
①の続編として、清水教授・はじめしゃちょー・市岡元気さんの、ものづくりについてのトークをご覧いただけます。