北海道天然資源の利活用による新産業の構築

室蘭工業大学

キーワード:脳機能・地域未利用素材

アルツハイマー病の発症は、たんぱく質の一種アミロイドβが脳内にゴミとして蓄積(凝集)することが原因のひとつとして考えられています。室蘭工業大学では様々な食品やアイヌ伝承植物など約500種類以上の植物を調査し、白糠町産チリメンアオジソにこのアミロイドβの蓄積を抑える働きが強い成分が含まれていることを明らかにしてきました。この推進計画では、白糠町産チリメンアオジソの成分を活用し脳機能維持を目的とした機能性表示食品の開発を目指しています。そのために、道内外の様々な企業や自治体、道総研食品加工研究センターと共同研究を進めプラットフォームを構築、北海道に新しい産業を生み出し地域の活性させることも視野に入れています。

研究代表者

室蘭工業大学 しくみ解明系領域 化学生物工学ユニット 上井幸司准教授

室蘭工業大学 しくみ解明系領域 化学生物工学ユニット 徳樂清孝教授

背景

現在、先進諸国では超高齢社会の進展により糖尿病や高血圧などの生活習慣病の増加に加え、認知症の高齢者の急増が大きな社会問題となっています。認知症の半数以上を占めるアルツハイマー病の患者数2050年に1億3200万人に達し、現在(約4680万人)の3倍となる可能性があります。

アルツハイマー病は精神機能が徐々に失われていく病気であり、本人はもとより支える家族や友人との関わりにもつらい変化が生じることが多々あります。また介護問題(担い手不足や老老介護等)は、高齢者のかかりやすい病気を減らすことで解決に近づけることも可能となるかもしれません。このような状況からも、アルツハイマー病は克服すべき喫緊の課題であると言えます。

また、北海道はアイヌ伝承植物を含め天然資源の宝庫です。そうした魅力的な素材を活用した機能性表示食品を開発し、原料の供給から製品化まで“オールmade in Hokkaido”で実施することで、地域産業の活性化にも寄与したいと考えています。

解決したい地域課題・社会課題
  • アルツハイマー病
  • 少子高齢化により担い手が不足する介護問題       
  • 北海道における地域産業の衰退
研究シーズ

①認知症発症の引き金となる物質がどのように蓄積(凝集)するかイメージングする手法を確立。その手法を応用し凝集阻害物質のスクリーニングシステム(微量ハイスループットスクリーニングシステム=MSHTS)を開発。

②チリメンアオジソやアイヌ伝承有用植物をはじめとする500種以上の北海道天然植物エキスのライブラリ作製と、①を利用した活性評価。

③学内に設置した試験圃場

 

室蘭工業大学試験圃場
取り組み内容
  • モデルマウスを用いて認知機能維持や改善効果を生体内で確認すること。
  • チリメンアオジソの機能性成分を確認すること。
  • チリメンアオジソの機能性を維持することのできる、機能性表示食品に最適な加工方法を開発すること。
  • ヒト介入試験

令和5年 JST共創の場形成支援プログラム(COI-NEXT)地域共創の場(育成型)に採択されました。
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取組詳細「アシル-トイタによる心と体に響く新しい食の価値共創拠点

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目指したい未来

アルツハイマー病だけでなく、糖尿病やリウマチなどの発症にも変性タンパク質の蓄積(凝集)が関与しています。タンパク質の研究者として、そうした病気になってからではなく日々の食を通じて予防できるよう貢献すること、またそうした病気の増加カーブを抑制することで、人が老いや病におびえることなくいつまでも健康でいられ、働き続けることのできる未来を目指しています。

また北海道の魅力ある素材を生かした付加価値の高い製品の開発・生産を、上流から下流までオール北海道産にこだわることで地域に産業と雇用を生み出し、住み続けられる地域社会づくりにも寄与したいと考えています。