酪農家の作業軽減を目指した酪農DX導入

キーワード:酪農、DX、軽労化®

背景・内容

コロナ禍における牛乳、乳製品の需要低迷による生乳の余剰、ウクライナ危機や円高による飼料や肥料、燃料・エネルギーなどの生産コストの高騰などが重なり、現在の酪農業は危機的な状況に置かれるなか、離農者も増えており酪農家戸数は減少傾向にあります。また、他産業に先駆けて進んでいる高齢化や人手不足などの影響から酪農家の労働負担は増大しており、労働時間や作業負担の削減といった労働環境の改善が急務となっています。このような状況の改善の一助となるよう具体的な取組を実施しています。

関連団体

株式会社リープス、エゾウィン株式会社

解決したい課題

酪農家の人手不足や高齢化など

研究シーズ・技術シーズ

人手不足や高齢化に対応するための技術開発や負担軽減のための技術開発

取り組み内容

本課題の解決に向けて、令和4年度に、以下の2つの実証研究を行いました。

①「ミルキングパーラーにおける省力化・軽労化®を目的とした搾乳支援ロボットの開発検討」
株式会社リープス

搾乳作業の省力化・軽労化®の課題に対し、牛舎改築等の過大な投資の必要ないアドオン型の搾乳支援機器が求められています。市販の深度カメラや汎用ロボット製品、既存技術を組み合わせるなどして、搾乳支援に係る、乳頭検知、搾乳機器の把持、乳頭へのロボットアームのアプローチ等の技術に対し原理的な検証を行いました。市販の深度カメラを用いた乳頭検知技術や把持機構設計手法の確立、協働ロボットを用いたティートカップの自動着装機能の実装及び動作確認を実施し、搾乳支援ロボットの可能性が示唆されました。

▲RGB画像に対する乳頭検出結果

▲Depth画像に対する乳頭検知結果

 

➁「良質サイレージに必要不可欠な踏圧作業を可視化するシステムの検証開発」
エゾウィン株式会社

酪農現場で行われるサイレージ(※)作業において、良質なサイレージを作るために、適切かつ安定した踏圧作業が重要ですが、踏圧作業は経験やノウハウに基づいて行われている状況です。この取組では、踏圧作業の可視化に注目し、バンカーサイロの踏圧について3Dモデリングによる検証を行いました。タイヤショベルの踏圧を目視で観測するのではなく、3Dセンサーカメラを装着しデータを取得、検証を行いました。その結果、大量の点群データを取得し、バンカー踏圧の一部について3D解析を実現しました。

※サイレージ=青刈りした飼料作物をサイロに詰め、乳酸発酵させたエサのこと

目指したい未来

 酪農業の人手不足や高齢化、飼料高騰への対応の一助となるよう、産学官金さまざまな知を結集して、酪農家の労働負担の軽減に係る技術や仕組みづくりについて、現場との対話を重視しながら取り組んでいきたいと考えています。