道内産木材の有効活用付加価値向上を可能にするシームレスDX導入

公立はこだて未来大学

キーワード:林産業・木材・DX・暗黙知

背景・内容

循環型資源の有効活用への関心の高まりや世界的な木材の不足「ウッドショック」の長期化により、道内では広葉樹資源の地産地消や、これまで安価なチップ材となっていた木材の用材としての活用に、注目が高まっています。そのような中で、製材所で丸太から角材(用材)を切り出す「木取り」の作業は、熟練者が経験をもとに木目・節の入り方を判断することによって行われており、このような暗黙知の伝承や自動化は、担い手の不足する産業において急務とされています。

この推進計画では、木材の特徴を解析し得られた情報を、伐採・生産加工現場(製材所)・設計に生かすことのできる一連のDX技術を開発し実装します。具体的には、伐採現場で木目・節の入り方を解析し、その情報をもとに適切な木材加工や「木取り」が行えるようにします。また、家具製造現場では材の木目・節の入り方などの情報を活用した設計を可能にすることを目指します。

研究代表者

公立はこだて未来大学 吉田博則准教授

解決したい地域課題・社会課題

・林産業の担い手不足
・木材の無駄のない活用
・木材加工現場における暗黙知の伝承

研究シーズ

公立はこだて未来大学では木材加工にデジタル技術を活用する研究を行ってきており、宮大工の墨付け技能の伝承を支援するアプリ開発や、木材の内部構造のモデル化および任意の切断面のCGによる可視化、不定形材による対象物の自動組立支援、端材の活用などの独自のシーズを有しています。

取り組み内容

1.木材のデジタルツイン
産地と製材所、そして家具加工業者が近接する北海道の地理的特性を活かし、原木から製材、加工、家具までをデジタルツイン(実際の木材を計算機上に再現し、計算機上で仮想的に加工作業することを可能とする技術)でつなげます。

2.教育アプリ開発検証
宮大工に必要な技能・技術の一部は、空間を把握し、イメージできる能力が強く要求され、習得には長い期間を要します。そこで、屋根の3 次元モデルを表示し、ユーザが自由にディテールを確認できるようにするツールを開発し、非熟練者の技能習得を支援します。

3.端材の有効活用
本提案では林産現場における端材、特に広葉樹でかつ高品質な加工がなされた端材のアップサイクル(転用)を目指します。

目指したい未来

木材加工の世界はいわゆる「職人技」によって支えられてきました。しかし昨今、担い手不足の深刻化や、ムダの少ない資源活用、道産材の地産地消といった様々な課題に対応する必要があり、そのためにはDX化は避けて通れません。しかし完全な自動化は地域の衰退と表裏一体の側面があり、産業振興と地域振興の両立のためには、個々の材の特徴に応じた活用、すなわち「適材適所」のDX化によって、非熟練者であっても作業に従事可能にすることが重要なのです。その過程において必要となる暗黙知の可視化によって、大工技能の継承といった文化保存や人材育成にも寄与したいと考えています。

この推進計画の成果をもとに、木材の情報化とその応用に関わるコンソーシアムを設立する等、継続的かつ発展的な研究をシンポジウムや勉強会を通じて進めていくことで、産官学金が連携してこの課題に対応し、道内の林業の維持発展に貢献したいと考えています。