道内広葉樹の資源管理と効率的活用を目指したDX推進

北見工業大学

キーワード:林業・DX

背景・内容

現在、家具などに使用される道産広葉樹はウッドショック等の影響で不足しており、銘木市等で高値で取引されています。その一方、道産広葉樹の多くは山元ではその価値が精査されないまま、バイオマス発電のためのチップ材として出荷される等しています。

良質な道産広葉樹がより付加価値の高い製品を生み出す川下企業に届けるため、この推進計画では、「川下企業(家具業界等)」に、「川上(山元)」に存在する広葉樹に関する的確な情報が提供されるシステムを構築します。

また、広葉樹林の価値精査においては、枝下通直性や胸高直径、樹種といった情報が重要です。しかし広葉樹は針葉樹と異なり枝葉が広がっているため、UAV(無人航空機/Unmanned Aerial Vehicle)等による上空からの撮影での情報取得は困難です。地上からの林地調査手法として、360度カメラ付きバックパック型3Dスキャナーによる撮影を行い、胸高直径および枝下通直性のデジタル保存方法の確立と検証を行います。

研究代表者

北見工業大学 地域国際系 三枝昌弘准教授

解決したい地域課題・社会課題

・北海道産素材の高付加価値な活用
・道産広葉樹の情報共有システムの構築
・サプライチェーン最適化による物流コスト削減
・DX化および適正取引による林業の担い手不足解消
・森林の適正管理

研究シーズ

360度カメラ付きバックパック型3Dスキャナー撮影による樹種判定および解析技術

取り組み内容

【測定技術開発】

・広葉樹林における枝下通直性や胸高直径などの情報収集にはバックパック型の3Dスキャナーが有効であり、360度カメラが装着されたタイプを用いれば樹皮の状態などを含めた詳細な樹木情報を取得できることを確認している。

・林道からの撮影に加え、伐採候補となりうる広葉樹についてさまざまな方向からの測定データ・画像を取得し、当該樹木の全面の情報をPC上で容易に閲覧可能とするソフトウエア処理を確立する。

・広範囲な測定により森林内配置情報を得つつ、対象樹木については詳細な情報を得るための効率的な計測・撮影方法を確立する。

・LiDAR(レーザー光照射による反射光を利用した計測技術/Light Detection And Ranging)による測定で得られるによる樹木情報(枝下通直性、胸高直径など)と実際の計測値との比較やPC上での樹木表面の再現について比較検証する。

撮影画像に写った個々の樹木の樹種の判定とタグ付けを行い、教師データを作成する。またどこまでの分類が自動化されるべきかの仕様を確定する。

・森林管理者のニーズ調査を行い、得られたデジタルデータを処理して、必要な情報が提示される方法について検討を行う。

【サプライチェーン関連】

・川下企業にとってどのような情報がDXによって共有されることが重要であるのか、調査を行う。取得したデータから、「川下企業」が求めている情報をわかりやすく提示する方法を検討する。

目指したい未来

 林業は担い手不足の著しい産業のひとつであり、また山林の維持は自然環境の保持、国土保全、防災の面からも非常に重要です。川上の情報を川下企業まで伝え、適正な価値で木が取引されるようになることで、林業も山林の維持も持続可能なものとなります。自然も人も豊かに暮らし続けられる北海道のために貢献したいと考えています。