酪農学園大学
キーワード:バイオガス発電、発酵、マイクログリッド、消化液
背景・内容
バイオガス発電のような、地域に賦存するバイオマス(動植物由来の有機性資源)を活用する電源は、その活用によって資源・エネルギーの地域循環に貢献するものであり、地域において活用され得る電源として新たな能力評価が必要です。
バイオガス発電は北海道を中心に全国でも普及していますが、実際にはバイオガス性状を含めた発生量の不安定化によってエネルギー変換にロスが生じているなど、多くの改善点を残したまま運用されているのが現状です。
酪農学園大学では、実用規模のバイオガスプラント(以下、BGP)を有し、牛のふん尿などのバイオマスを利用したメタン発酵、発電、消化液の有効利用、機器設備の改善などを検討するプラットフォームを提供することができます。この推進計画では、学内のBGPを利用して、効率的な発酵条件などの検討を行います。また、革新的なバイオガスエネルギーシステムを開発することにより、効率的な電力、熱、バイオガスの発現システムの構築を図ります。さらに、農業・畜産領域における消化液の有効性についても評価します。
研究代表者
酪農学園大学・農食環境学群・循環農学類 農業施設学 石川 志保准教授
解決したい課題
北海道には140以上のバイオガスプラント(BGP)が設置されていますが(R3年度)、メタン発酵・発電の安定化、消化液の固液分離処理により得られる固形分・液分の活用など、多様な点において今なお改善が求められています。
研究シーズ
酪農学園大は、開学以来探求してきた「循環型農業」のシステムモデルである、バイオガス研究を長きにわたって展開し、日本をリードしています。学内に道内大学発のBGP(345㎥)およびその関連施設(研究室内に20L・2基および200ml・12基のラボスケール発酵槽)を有しており、学内の酪農・畜産によって原料供給も確保できています。企業や各種団体による設備見学も積極的に受け入れ、バイオガス研究をリードしてきました。
研究代表者の石川准教授は、「FIP対応型バイオガスCHP運用モデルの開発とBGP設計への適用の研究」や「バイオガスプラントの熱利用拡大に向けた研究(民間との共同研究)」を進めています。酪農の現場におけるBGPの運転からエネルギーマネジメント、発酵後の固形物の敷料利用・消化液の利用、などの一貫した研究を特徴としています。
酪農学園大学では、電気・熱・バイオガスのエネルギーマネジメント技術や、消化液の高度利用化技術などの研究も進めており、これらの研究において、これまで電力会社、BGPメーカー、東大、北大、農研機構などと連携しています。
取り組み内容
- BGPにおけるバイオガス発生シミュレーション、発電以外のエネルギーの有効利用方法、効率的な発酵条件などの検討により革新的なバイオガスエネルギーシステムを開発することにより、効率的な電力、熱、バイオガスのエネルギー利用システムを構築します。
- 農業・畜産領域における消化液の有効利用法の開発や、発酵後の固体分の敷料利用(敷料としての快適性)の研究も進めます。
目指したい未来
日本のエネルギー自給率は11.3%(2020年度)と低く、私たちの暮らしは海外から輸入される化石燃料に大きく依存しています。しかし地域に賦存するバイオマス資源を活用してエネルギーを供給し、かつ副産物も有効活用することにより、地域の持続性を高めることができます。酪農・畜産が盛んな北海道では、牛のふん尿はその処理において環境への影響や臭気の点で課題がありますが、そのふん尿を有効活用したバイオガス発電は、その他多くの再生可能エネルギーと異なり天候に左右されないコントロール可能なエネルギー資源です。この推進計画により、地域内でエネルギーや資材を循環させ完結する「地域循環型マイクログリッド」を確立し、地域に即した未来の社会循環システムの社会実装を目指します。